「無農薬」という表記について

「無農薬」という言葉が何を指すのか、あいまいで生産者によっても消費者でも捉え方がいろいろです。

というのも「無農薬」という表示は、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」違反(https://smartagri-jp.com/food/428)にあたり、私たちは、正確には「無農薬ですよ」と表示して野菜を売れないのです。

では、私たちが生産した野菜について端的にどう説明したら良いかというと悩んでしまいます。

「私たちが育てている期間は、化学肥料、農薬を使用していない」ということになりますが、
それがガイドラインで示すように、「栽培期間中農薬不使用」という表記になると、とたんに、んん?なんなんこれってなりませんか。

 栽培期間っていつからいつまでのこと?種から?タネを蒔く前に、除草剤を使ったら?土壌消毒したら?それはどうなるの?収穫後に消毒したら?などなど次から次へと疑問が湧きモヤモヤします。

 残念ながら現状では、栽培期間に農薬を使用せず、作付け前に土壌に除草剤を使用して、その後に種を蒔いても「無農薬」と言えてしまう曖昧さがあるということです。

 私たちは土壌においては農薬を一切使用していませんが、厳密に言えば、種子の時点で種子消毒を行った種というのも、農業の分野ではたくさん出回っており、(https://lib.ruralnet.or.jp/nrpd/#koumoku=12378)現時点では私たちも消毒されていない(農薬が使われていない)種子ばかりを選ぶわけではありません。むしろ、固定種や在来種の種に比べてそういった種の方が発芽率が良いと感じることもあります。ですので、種苗会社の技術や化学の恩恵にあずかって、私たちの農業も成り立っているということです。種子消毒がなされたタネから人体への影響がどれほどあるのかについてはほとんどわかっていないのが現状だと思いますし、これからも詳しくはわからないのではないかと思っています。

 その上で現時点での私たちのスタンスは、種子の時点で使われた農薬や消毒はあまり大きな危険とは捉えていない、ただし気にするポイントが別にあるというもの。僕は種から何百倍何千倍も大きく成長する植物たちの身体を構成するその多くの養分は、根っこを通じて土から吸収されると考えています。ですので、土壌に使われるもの、化学肥料、畜糞、農薬(特に除草剤や殺虫剤)などの影響は計り知れない影響があるなと思うわけです。ですので、土壌に入れるものや土壌に対して行う行為にはかなり気をつけています。現状では、私たちは畑の土に化学肥料・農薬を使わない、動物性の堆肥を入れない、大きく耕さないという方法でトライしています。

 種の技術やその生産については、私たちが現時点で手を出せる分野ではないと考えています。それは、時間的な余裕がないこともありますが、良い種子を取るには良い種子を取るための栽培が必要だと思うからです。例えば、アブラナ科の野菜は、かなりの確率で交雑してしまうため、次の年にできるものが、小松菜なのか水菜なのかからし菜なのか、ミックスされてなんだかわからなくなってしまうことがよくあります。私たちは、食べる野菜を生産しているため、種子には労力をかけられない現状があります(ゆとりがあればやってみたいのですが)。とはいえ、大豆や小豆などの豆科の野菜や芋類などは、クローンようななり方をしているため、自分たちで品種は繋いでいますが、それでも長く取っているとその品種の良さが薄れてくるなどの現象があります。

 このことからわかるように、タネ屋さんは、種を牛耳っているわけではなく、種にかかる労力や技術を生産者に提供してくれています。現在の日本の種の技術はとても優れており、私たちはその恩恵に預かって、現在のように畑仕事に時間をかけることが可能になっています。現状の僕たちの農業では、種子消毒された種やF1種(一代交配の種子)を使うことはメリットが非常に大きいです。(F1種、固定種、ゲノム編集などの種については、後々僕なりの考えをブログで表現していたいと思います)

 話は戻りますが、

 上記のようなことから、「無農薬」という表現については、曖昧な部分が多く、私としては簡単に表現できないなと思います。ですが、生産者として自分の考えをわかりやすく、誤解のないように説明していく必要性を感じます。

 写真は、カーボロネロ、最近朝は凍っていることもしばしばです。寒さにあたり、より旨みが凝縮されているように感じます。


農薬については以下の文章も参考にしました。 

日本では、農薬使用基準となる法律が定められている。https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kaisei/h141211/h141211f.html

農薬の使用には、農薬取締法がある。https://minorasu.basf.co.jp/80086

2023/12/5 Kosuke Kumaoka

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