種について(1)

 野菜の種について、ごきげんやさいではどのように採取、購入し、考えているかということをご紹介していこうと思います。

 野菜の種には、大きく分けて固定種(在来種)、F1種があります。

 2024年 タキイ最前線(タキイ種苗さんの春種特集号)p.59では、市川 啓一郎氏 「第一回 F1種への誤解」の中で次のように表現しています。

 固定種:長年にわたる自然淘汰や人間による選抜の結果、遺伝的に植物としての特性が固定(安定)している品種のこと。ある程度は、遺伝的多様性をもつため、形状や色といった形質に多少の変異があるが、親から子、子から孫へほぼ同様の形質が受け継がれる。一般種、在来種、地方種も同意。

 F1種:性質のことなる2種類の親系統(原種)を交配して作り出した雑種第一代のこと。一つのF1種を育成するには、約10年の年月を要する。交配種、一代雑種、ハイブリッド種も同意。

 かなりざっくりですが、わかりやすくすると、

固定種:遺伝情報が安定(固定)している、採種することで年々自分の畑の特徴や自分の好み合わせた形質の種をつなぐことができる。年々種の種類が減っている現状がある。

F1種:一代に限り優れた形質のものを生む種。現在の農業ではほとんどの種がF1種である。

 農家目線で見てみると、

 固定種では、

 例えばカブを例にすると、親とほぼ形質の同じカブが成長する。発芽や生育が揃いにくい。形質が個体ごとに少しばらつく。
 固定種について僕が感じるメリットは、固定種の種からできた野菜は個体ごとに形質がかなりばらつきがあるが、総合的に野性味がある味がして、スーパーではあまりみられない珍しい野菜ができるし、畑にマッチすればとても強くて味が良いものを毎年収穫できる。採種の楽しみがある。採種した分種代はかからない。デメリットは、成長のスピードにも味にも個体差がある。病気に弱い(逆に畑にあっていると強い場合もある)、種を採種する労力がかかる。

 一方でF1種ですが、

 F1のカブは、一代に限って良い形質のものが収穫できる。味や成長のスピードは揃いが良い。味や食味が良い。発芽や生育が揃いやすい。病気に強い(特定の病気に耐性を持って作られる品種があり、自分の畑で出やすい病気に強いものを選ぶことができる)、収量が良い。採種の手間がない。
 デメリットとしては、採種の楽しみがない。毎年種を購入する必要がある。

 さらにざっくり言えば、F1種は安定収量ハイブリット型、固定種は地域密着有機型とも考えられるでしょうか。僕のように不安定な(大きく耕さない、化学肥料、農薬不使用など)農業の場合、F1種(安定収量ハイブリット型)も、固定種(地域密着有機型)もどちらもとても大切で必要です。

 固定種には固定種の良さがあり、F1種にはF1種の良さがある。毎年の品種の選定は、師匠たちが実践していた結果をデータとして見て、また自分たちが育ててみて、ほぼ好みで決めています。これは、今後も研究を重ねて変化し続けると思います。固定種、F1種の比率としては、年間15万〜20万の種代のうち、固定種とF1種で、ちょうど50%ぐらいづつの比率になっています。

購入先は以下です。

固定種:
野口種苗研究所(https://noguchiseed.com/hanbai/
自然農法センター(https://www.infrc.or.jp/
小林くんのタネ(https://toyokeizai.net/articles/-/313162?page=5)などです。

F1種:
黒沢商店(海老名市)(https://kurosawaseed.com/
ホームセンターなどです。

 固定種の種を購入して毎年自分で自家採種しているかというとそうではなく、自家採種している種はごく一部(豆類やニンニク、生姜、芋類(じゃがいも、さつまいも、里芋)など)です。これらについても100%自給ということでなく、毎年新しいものを買い足しています。その理由は、固定種の形質維持が難しいということと、収量が伸びないということからです。自家採種には技術と時間(労力)を要すると思います。例えば、アブラナ科の野菜は、アブラナ科科同士でかなりの確率で自然に交雑してしまうため、小松菜として種取りしたものが次の年に蒔くと小松菜と水菜が混じったような葉っぱができるなどの難しさがあります。交雑しないようにするには、一つの畑でアブラナ科を1品種だけ育てるなどの管理が必要になります。僕のように、一つの畑で何十種類もの野菜を育てることをしているととても現実的には難しい面があります。また、採取した種子が何の種だかわからなくなってくると、野菜に合わせた環境づくりもできませんし、お客さんに何の野菜です、美味しいですとも言えなくなってしまうという困ったことになります。採種ができたら面白いなとも感じるのですが今のところその手間と技術がありません。とはいえ、自分たちの畑に合った作物を種取りしながら探していきたいなという欲求は持っていますし、その実践のための時間を年々増やしていけたら良いと考えています。

 種についてはとても奥が深く、素人が少し勉強したくらいではわからないことが多いです。固定種が良い、F1種がよくないとか、またはその逆とか生産者や消費者で意見がいろいろ別れているみたいですが、結局どちらが良くて、どちらが正しいということでなく、自分たちで栽培してみて、味わってみて、時間があれば種も取ってみて、選択して自分たちの生活に合うものを選んでいくしかないと思います。

 数年家庭菜園やり、農家になって思うことは、私たちは固定種の良さもF1種の良さも知ることができてよかったということと、どちらであっても、畑で命を輝かせる野菜にかわりはなく、美味しく、美しいと思っています。

 写真は四角豆の種(さやごとです。この中に豆が入っています。)近くの家庭菜園先輩にいただいた種、今年採取して、来年につなぐことができそうです。

2024/2/6 Kosuke Kumaoka

 

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