土に触れる 大地に立つ

 ラッパーKRS-ONEが、映画『FRESHEST KIDS』の中で、「なんで地面に手をついて踊りたいと思う?大地に触れたいというのは人間の本能だからだよ」(僕の記憶なので不確かですいません)みたいな発言をしていたのを最近よく思い出す。

 しゃがみこんで、大地に手をつく。1日のうち何度それを繰り返しているだろう。種を蒔いたり、草を刈ったり、ものを持ち運んだり、農業者は本当に地面に這いつくばっている。這いつくばって見えてくる世界は、本当に不思議な魅力でいっぱいだ。朝露に濡れた雑草たち、土に潜る虫たち、花を飛び回る蜂や蝶、待ち構える蜘蛛の巣、積まれて枯れゆく草たちなどが一斉に五感を刺激する。時にものすごく体がしんどい時がある。最近の暑さ中で2、3時間作業を続けていると足元がフラつくこともある。しかしそうした瞬間に見えてくる世界にもまた不思議と魅力を感じる。これは今、僕にしか見えない瞬間を確認してしまったのでは、と思うことがある。

 理にかなった動きとは、美しいものである、僕はそう思っている。あらゆる格闘技や武術、体操やスポーツ、ダンスなどは、徹底的に繰り返され、自然と力むことがなくなり、やがて具体的に作用し、人に何らか影響していると思う。  僕にとって、理にかなっているとは、単に「合理的」と表現できるものとは少し違っていて、イメージに近づくための最短ルート、最速な動き、対象との調和、絶妙な距離感とかそのようなものと近いかもしれない。だから、絶対的に正しいとか間違っているとかいうことがなく、必死になればなるほどオリジナリティー溢れたものになると思っている。多くの人が見て、奇妙で受け入れ難い見た目であったとしても、本人にとって理にかなっている動作には、美しさが内在していると思っている。

 自分がしゃがみ込むその動作が、なんとも言い表せぬ身体表現になっていっていくとおもしろいなと感じている。畑でじゃがみこみ、土に触れ、大地に立つことで、いつしか自分も受け入れられてその一部になれたらいいなという感覚がある。畑での動きはとても楽しみになっている。

写真「在来青なす」

暑さに負けずに調子良いです。

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